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20代の女の子が自分の生き方や恋愛に悩む姿、揺れ動く心情を細かく描写した作品を書き続けている玉岡さんですが、現実の世界では二人の娘さんのお母さん。「主婦や母親をしながら、テンプラを揚げながら(笑)、恋愛小説のクライマックスを書くのは至難の技ですよ。一歩踏み外せばほんとに陳腐な場面になってしまいかねないですから」 と苦労する面を話して下さいました。でも実際お会いしてみれば、とても明るく、好奇心やバイタリティにあふれた印象。小説の主人公がみんな本当に生き生きしている理由がわかったような気がしました。「関西の風土をずっと描いていくつもり」と、生まれ育った土地への愛着もうかがえました。 (聞き手・本誌編集部)
編集部:玉岡さんの作品では、学生から社会人になる区切りの時期の女の子を取り上げたものが多いですが…。
玉岡 今まで生きてきた中で人生の重みを感じさせられたのが20代初めだった、という実感のもとに書いてます。今の若い人は苦労知らずと言われますが、彼らは彼らなりにその年代ですごく悩みながら人生を見てる。それを訴えたいし、また、揺れているその年代の人への応援歌になればと。
編集部:でも最後は全部切ない終り方なんですね、別れてしまったり…。
玉岡 それは作者の性格がひねくれてるからだと思いますけど(笑)、まだハッピーエンドにしてあげるのは十年早い、つていう…。「22〜25ぐらいの、そんなにも輝く若さがあるんだからもっと苦労しておいで」って(笑)、そんな気になってしまうんですよ。
編集部:結婚して家庭に入ってメデタシメデタシではタメなんですね?
玉岡 可能性を全部ふさぐことになるでしょぅ? 昔のフォークソングに「青年は荒野を目指す」っていうのがありますが、それなんです。無敵の若さがある若者は荒野こそを選んで進んでほしい、という一つのエール。安穏な道ばかりを選んではドラマは生まれないし、涙も流せないですから。
編集部:あまり早く守りに入らず、もっと頑張ってほしい、と。
玉岡 ゴールに着くと後は守ることだけになりますからね。でも、守りよりもまず攻める方に若者は燃えてほしいなと思うんです。
編集部:そんな風に思われる理由は?
玉岡 どうでしょう…。私自身が何かを得よぅとがむしゃらに走ってた若者の一人だったから、自然とそんなテーマになったのかな。結局何も得られなかった悔いがあるので(笑)、未完成に終わった自分の青春を小説で補っているのかもしれないですね。
シングル女性の生きざまへのこだわり
玉岡 私は、どうしても関西の「女の子」を書きたいんです、これからも。それが「女の人」に変わるかもしれないですが。「夢食い魚のブルー・グッドバイ」を出してから七年になるんですが、最初の読者が「三十歳ぐらいの主人公の話が読みたい」 って手紙を書いてきたりすると、読者も年を取るもんなぁ、と思ったりね (笑)。私も今の年齢になってまた違う世界を書ける一つの転機にあると思っているので、随時(主人公の) 年齢は上がっていくでしょうね。年明けに出る本は主人公が26歳から29歳までの話なんですよ。それを書き終わればいよいよ30歳に挑戦できるかなと思ってますが、それでもやっぱりシングルの女の子の話を書きたいですね。独身の女の子の方が絶対に、悩んでる分人生を生きてると思うんです。これは私が結婚して痛感したことなんですけどね。やっぱり結婚してしまうと自分のテリトリーができてしまって、それが大事になってしまいますから。
編集部:守るものができてしまうと、それを置いていけなくなりますしね。
玉岡 そうなんですよ。実際、私がほんとにそれで苦心したんです。デビュー作の時には二人目の子供がいたので、子供のオムツをかえながら構想を練り、昼寝の間に原稿を書いて…。今となっては何かが取り憑いてたとしか思えません。ぐうたらな主婦だったのが、この時は寝る問も惜しんで、子供が起きてきても手を合わせて「ゴメンネ!」と言いながら書いてたんですから。
編集部:すこいパワーですね。
玉岡 でもデビューしてからは取材に行って書きたいものがあっても、子供がいると身動きできなかったり。主人は普通の女と結婚したつもりだったのに、急に私が物書きになってしまったから「話が違うぞ」となったり。結構、家族の中でも摩擦があったんですよね。よく「理解のあるご主人でいいですね」なんて言われるけど、全然! 日々戦いですよ(笑)。これが独身だったら自分のしたいことができますもんねぇ。
編集部:ある意味で自分のことだけ考えていれば済む面がありますからね。
玉岡 だから独身で活躍しておられる女性作家の方と話をすると、彼女達がうらやましくて仕方がないんですよ(笑)。鷺沢萌さんは作品を書くために一年間留学、谷村志穂さんは全国を車で回ったり…。そういうのを聞くとフットワークの軽さでは結婚すると全然だめだなと思いますね。私は自分にできる範囲で両方守りながら、均衡を取りながらやっていくしかないので…。歯痺く思う人もいると思います。年に一冊しか本を出さず、それも割と早く読めてもう一冊読みたくても本がない、というタイプの作家なので。もっとバリバリやればいいんですけど、できない事情もあるという感じでね (笑)。
編集部:でも、子供さんの手が離れたらまたフットワークは軽くなるでしよう? それに読者や主人公よりは一歩先を進んでるから、またそれを書けるわけですし。
玉岡 その点は楽かもしれないですけど、まだまだ先ですね。
編集部:その様子だとまだ当分はシングルの女の子にこだわっていかれるようですね。
玉岡 そうですね。年明けの作品が出たら、次はちょっと時代をさかのぼって戦前のシングルの女性を書いてみようかなと思ってるんです。
編集部:それもまた難しいでしょうね。
玉岡 そうですよ。だってまだその時代を知っている人がいっぱいいらっしゃるし、なまじ私が戟前を知らないだけに。
編集部:取材とか聞き込みがかなり必要ですね。
玉岡 あと、資料を集めたり。
編集部:準備にはどのくらいかかるものなんでしようか?
玉岡 長編はかなり。最低一年はかかりますね。私は「出たとこ勝負」のタイプですから、初めは脇役だった子が書いてるうちに意外と生きてきて、もうちょっと何か体験させたくなったり。短編は最初からオチを決めてそれに向かって走るのでそうはいきませんが、長編は何が起きるかわからない。そういう点で私は長編が好きなんです。
神戸が自分のステージ
編集部:神戸や大阪が舞台の作品が多いことについては?
玉岡 私自身を育ててもらった街だから、取材をせずに書ける街なんですね。私が生まれたのは神戸の北側にある三木市ですが、神戸の文化圏で育ち、なまじ自分が生粋の神戸に住んでないだけに、余計に気持ちが神戸に向かってたのかもしれない。書きやすいんですね。自分のステージといった感じがあります。ちなみに、年明け頃に出る書き下ろしの長編小説はいわくつきの作品なんですよ。これも神戸を舞台に書いてたんですが、やっと書き終わった時にあの大震災があったので、急きょ第二部をつないで、震災と震災後の神戸を描くよう一気に書き換えをやったんですよ。たまたま第一部で書いてた場面が活断層上の土地ばかりでね。主人公の家が御影で、家が異人館を経営しているという設定で。震災ではどちらも被害を受けましたから、こういう話を書いたのも何かの暗示かなと思ったりして…。
編集部:玉岡さんにとってそれだけ神戸が身近ということなんでしようか。
玉岡 笑われるかもしれませんが、超自然的なものが私に書かせてるような気がして。ほんとに活断層の上ばっかり舞台にしてましたから。きれいな時の神戸だけじゃなく、それが粉々になって再建に向かって歩き出してるその姿を書け、という暗示かなと。
編集部:時期が時期だけにそう思わないではいられないところがあるのかもしれませんね。
玉岡 だからほんとにこれはいい作品にして送り出したいんです。「神戸ハートブレイクストリート」 っていうショートストーリーの作品は小説というより神戸のきれいな場所だけを書いたスケッチみたいな本なんですが、今回、取材で震災後一週間目頃から神戸に行った時、「あの本は全部フィクションになってしまったの?」 って。そういう実感でした。だから、やっぱり震災前のきれいな神戸を書いてるんだから、これからの神戸を書かないと今まで神戸を書いてきた意味がないかな、と思っています。
編集部:小説の中の神戸の風景が作り物になってしまわないように…。
玉岡 このままだと、きれいな時には小説の昧つけで借りてきてただけってことになりますからね、これからが本当に恩返しかな、と。
編集部:きれいでなくても神戸にはいい所があるというのを証明するために書くわけですね。
玉岡 ほんと、その通りです。
ミュージカルと歴史小説
玉岡 去年の三月、播州地方の歴史にスポットを当てた「戦国播磨異聞−ランナウェイ」というオリジナルのミュージカルを地元でやったんですが、機会があればもう一度やりたいです。この時は「ACT−K」という劇団を作って私が代表になり、原作・脚本と芸術監督をやって、お陰様で大成功を収めましたが、結局、田舎だったこともあって、一発花火をあげただけで後が続かないために挫折感を味わったんですけど…。
編集部:一回で解散になったんですか?
玉岡 そうなんです。すごくお金がかかって、劇団員を食べさせていけないというのがまずありますし。自分でチケットを売ったり自腹を切ってでも続けたいという子はいましたけど、私はそういうのは不本意なんですよね。やるからには食べさせていきたいし、本当のプロ意識を持ってやってほしいし。だから「次に大きなプロジェクトをするときは必ず声をかけるからね」と言って解散になったんです。私も脚本そのものにまだ未練があって、いろいろ手を入れたいところもあるし、機会があれば「完全版」を作りたいですね。
編集部:さらに磨き上げての挑戦ですね。
玉岡、そえ。ミュージカルのテーマそのものが「播磨者とは何ぞや?」なので、、これは絶対、今この播磨に住んでる私たちに通じるものなんですよね。もうちょっと自分たちを見詰め直してみない? という問題提起があるので、これを掲げてやりたいなと思うんですけどね。
編集部:小説とは全然違う世界ですね。
玉岡 私が時代ものを書いたので、みんなびっくりしましたけど、もともと歴史小説は好きですし。これは私の老後の楽しみでね(笑)、将来、歴史小説を書こうと思ってます。でも今は、今しか書けない若い時代の作品があると思うので、それを地道に書いていって、読者と共に、私も年を取ってるわけだから、もっと円熟した女性を描けるようになればいいなとは思いますね。
編集部:フアンとしては楽しみですね。
玉岡 言ってるばかりでなかなか書かないのでいつも編集者に怒られてばかりなんですけどね (笑)。 |