玉岡かおる
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ペットボトルの中の幸せ
水とくらし
 

神戸ブランドの飲食物にはおいしいものの代名詞として名を馳せたのが多いが、神戸の水、六甲山の水もその一つだろう。
昔、世界じゅうの船乗りたちが、神戸港に上陸してまず求めたものは、この、ただで飲めるおいしい神戸の水であったという。実際、新神戸トンネルの岩盤から染みだしてくる水の清冽さは、一度知ったら感動ものだ。ポリタンクを手にして並ばなくても、近くのお店で簡単にポリボトル入りを買えるようになったのは、実にありがたいと言わねばなるまい。
ところでポリボトルといえばこんなできごとを思い出す。先ごろ、日本じゅうを興奮させて過ぎたサッカーのワールドカップの観戦にフランスへ行った時のことである。フーリガン対策のため、町じゅうに配置された憲兵はものものしいばかりだったが、ゲートでのボディ・チェックもまた厳しかった。一人ひとり、体のチェックはもちろん、鞄の中を開けて調べ、巻いた国旗まで広げさせて、中に銃や短剣が隠されていないかを点検する。そしてペットボトルも、彼らの手で封を切ってから返されるのだ。これは一体、なぜなのか。
もちろん、私がリュックに入れてきたペットボトルはただの飲料水だ。ご存じのように、ヨーロッパでは水質がよくないので日本のように水道の水を直接飲むことができない。だから店頭売りのミネラルウオーターが発達したわけだが、それをこんな疑わしそうに扱われても。聞けば、ボトルの中に劇薬や爆発物が封入されていないかの点検のためという。
なるほど、ここまでしないと万全は期せないらしい。ボトルの中に”安全”を見るフランス人と、”おいしい”を詰める日本人。封をしていない水は生ぬるく味気なかったが、我々がやっぱり幸せな民族であることを知るには、じゅうぶんすぎる量だった。