新刊『負けんとき ヴォーリズ満喜子の種まく日々』

11月28日、新刊『負けんとき ヴォーリズ満喜子の種まく日々』が、新潮社から発売されました。

上巻 1,680円 / 下巻 1,680円 新潮社

負けんとき―ヴォーリズ満喜子の種まく日々 上下巻

近江八幡でキリスト教を伝道し、メンソレータムを日本に普及させ、神戸女学院、大阪大丸、山の上ホテル、軽井沢ユニオン教会など数数の西洋建築を残したアメリカ人ヴォーリズ。彼の生涯の伴侶となった華族の娘・一柳満喜子の波瀾の生涯を描く書下ろし大作。

発行形態 : 書籍
判型 : 四六判変型
頁数 : 上巻・280ページ / 下巻・320ページ
ISBN : 上巻・978-4-10-373713-1 / 下巻・978-4-10-373714-8
C-CODE : 0093
発売日 : 2011/11/28

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発刊に寄せて

『お家さん』から3年。『銀のみち一条』から2年。
書き下ろしの長編小説に挑む私にとっては、まばたきの間のように感じますが、読者の皆さまには、きっとまだかまだかとお待ちいただいた歳月と思います。 そしてやっと、「お待たせしました!」と晴れやかに、新しい物語を皆様にお届けできる日がやってまいりました。

今回のヒロイン満喜子は、子爵令嬢という高い身分に生まれながらも、複雑な家庭に育ち、本当の愛を探してかなえられない少女期を送った女性です。やがて一人で生きる決心をしたときに、アメリカから来た一人のすがすがしい男とめぐりあいます。

米国から来て留まる。読んで字のごとく、のにち”米来留”という名の日本人に帰化する運命の男、ウイリアム・メレル・ヴォーリズがその人です。
建築家であった彼の作品は、関西学院大学、同志社、神戸女学院ほか、取り壊し問題で有名になった近江の豊郷小学校など、関西にはたくさん残っています。 近江八幡に拠点を置いた彼とともに、満喜子も幼児教育に身を捧げ、近江兄弟社学園は今もその精神を引き継いでいます。
さまざまな逆境を耐え抜き、社会が変わらないなら自分が変わる。そういう選択をして、最後まで負けなかった勇敢な二人の生涯。
けっして偉人伝ではなく、悩みもすれば迷いもする、そんな普通の人間として、玉岡かおるの筆力で等身大に描いた書き下ろしです。

正直、楽な仕事ではありませんでした。苦しく、つらくて、書き終わった時には涙が止まらなかった、そういう作品でもあります。
それだけに、こうして作品を送り出せることは夢のようです。
歴史に埋れ、消えゆく記憶の残像を、ふたたび光を放つ物語としてよみがえらせたい。そんな書き手の熱い思いを、ぜひ皆様にも共有していただけたら。そして、長編小説を読む醍醐味を味わっていただけたなら、それがなによりの幸せです。

玉岡かおる

『波』書評対談:大八木淳史×玉岡かおる

 

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